ニャンコ救出大作戦 ~泳げない筈の猫がなぜ島に~


左が北島、右が陸地。4月の雪融け時。陸地と島は氷面で繋がっている。

公園の椿事 ~それは2009年春に始まり秋に終わった~

札幌市中島公園にある菖蒲池は水と緑の公園を代表する池だ。その中に三つの小さな島がある。北島、中島、南島である。 その北島で起こった小さな出来事が、私を巻き込む大きな事件に発展するとは夢にも思わなかった。

「隊長、大変です!」
「お前の大変は聞き飽きた。 こんどは何だ、言ってみろ」
「北島で猫1匹と子猫3匹を発見しました」
「そりゃ大変だ!」
「ニャンコ助け隊長」の顔色が変わった。 

猫は泳げない。小さな北島に閉じ込められた猫に明日はない。
餓死するだけだ。 しかし、泳げない猫がなぜ北島に…。

多分、親子猫が知らずに凍結した池を歩いて、島に渡ったのだろう。
そして、氷が融けて帰れなくなってしまったのかもしれない。

「よし、ニャンコちゃんを助けるぞ」
「助けるぞー」
「救助艇出動用意!」
「了解。 ナカさん、シマさん行こうよ。ニャンコを助けよう」

「ニャンコ助け隊」といっても、近所のおじさん、おばさんの寄せ集めだ。 
予算もないし、船もない。 幸いこの池では貸しボートが営業されている。 

「借り賃は40分600円だから、一人200円でいいな。割り勘で行こう」
相談は直ちにまとまり、3人のニャンコ・レスキューが救助艇代わりの貸ボートに乗り込んだ。 

北島への往復に、10分かかるので救助に使える時間は30分しかない。 
厳しい時間との戦いになった。 

30分は、ニャンコと信頼関係を築くには、あまりにも短い。 強制連行しか手がない。 島内を逃げ回るニャンコを捕まえるのは至難の業だ。

「隊長、子猫2匹、救助しましたが、これ以上は無理です」
「よし、分かった。 とりあえず、エサと『猫小屋』を届けてやれ」
「叉ですか、ボートの借り賃払って下さいよ」

隊長から600円巻き上げ、ボートを借りて、救助物資を陸揚げしたが、この後が大変だった。 猫小屋用と考えて島に置いてきたダンボールが……、
思わぬ禍(わざわい)の種となったのだ。 

それはさておき、別の問題が発生。
「隊長、大変です」
「大変はいいから、早く報告せい!」
「ボート屋のオヤジがカンカンに怒っています」
「なんだと?」
「島に上がってはいかん! もうボートは貸さない。と言うのです」 

   ***   ***   ***   ***   ***

貸しボートの従業員が怒るのも無理はない。
元々ボートは波止場以外で乗り降りしてはいけないことになっている。 

それなのに、夜になると無断でボートに乗って池岸のアチコチにボートを乗り付けて上陸してしまう狼藉者が後を絶たない。 盛り場に近いので酔っ払いの仕業かもしれない。 

もちろん、営業時間外はオールを物置に格納する。 
しかし、静かな池だからオール代わりに手を使って漕げば、ボートは動くのだ。

ともかく、従業員の朝一番の仕事は放置ボートの回収だ。 
「さて、仕事しようか」と思ってボート乗場に着くと、係留していたはずのボートが池のアチコチに散らばっている。

こんな腹が立つことはない。 貸し出し準備に忙しい時に余分な仕事をさせられるのだ。 数艘のボートを繋いで漕ぐ従業員の姿を朝の散歩でよく見かける。

   ***   ***   ***   ***   ***

「よし、こうなったら非常手段だ。 夜襲をかけるぞ!」
「やしゅう…?」
「夜になったらボート乗場は無人だ。 オールは収納するが、ボートはそのまま繋いである。 かっぱらって、手漕ぎで行くぞ~!」
「隊長、落ち着いて下さい。 隊の目的は可愛そうなニャンコちゃんを救うこと。 隊のモットーは法令を遵守し、人に迷惑をかけない。 そうでしょう!」
「…………」
「隊長! しっかりしてください。レスキュー隊の名誉がかかっているのです」

冷静さを取り戻し、隊長は考えた。 島から岸まで10メートルくらいだから、エサを投げることが出来る。 「分かった。エサ投げ作戦開始!」

ニャンコを救うため我を忘れた隊長だが、直ぐに正気に返って臨機応変の処置が取れるからエライ! 流石は我等の隊長だ。 

しかし、事態は思わぬ方向に展開した。 北島に置いて猫小屋にしているダンボール箱を見た人が、警察に通報したのだ

「もしもし、一市民ですが、中島公園で不審物を発見…。場所は菖蒲池北側の中島。 不審物はミカン箱大のダンボールです」
「よし、分かった。爆発したら大変だから、中島公園を立入禁止にせよ!」
「あの~、一市民ですが~~」
「そんなことはどうでもよい。 緊急出動だ。緊急立入禁止だ~!」

直ちに、警官隊が出動して、猫小屋として設置したダンボールを撤去してしまった。 …と言うわけで、流石の「ニャンコ助け隊長」も万策尽きて、私のところに相談に来たのだ。

「ニャンコの命が危険にさらされています。 なんとか助けてやって下さい」
「公園の管理者にお願いしたらどうでしょうか」
「だめです! 保健所に知らされて処分されます」
「しかし、隊長が助けられないものを、どうやって私が?」

「この事実を、あなたのホームページ(HP)に書いて、世間に知らしめて下さい。救出ボランティアを募ってほしいのです」
「あの~、ボランティアは現れないと~思いますが~~」

「数億人がHPを見ているのですよ」
「私のHPを読む人は~、ホンのチョッピリですが~」
「見ず知らずの私も読んでいるのです。出し惜しみしないで下さい!
ニャンコちゃんの生存権が奪われようとしている、緊急事態です!」

買いかぶってくれるのは嬉しいが、現実が分かってから責められるのは私なのだ。だが、待てよ。 これはフィクションだ。 

隊長にとって「お望みの結末」にすれば、それでいいじゃないか。 
固いことは抜きにしよう。

「分かりました。全面的に協力しましょう! きっとニャンコは救われます」
「ありがとうございます」
「大船に乗った気でいて下さい」
「大船といいますと? ボートより大きいですよね」
「ええ、まぁ…」

隊長はニャンコ助け隊、全員に向って叫んだ。
「ボート屋に勝ったぞ~! 大船に乗ってニャンコ救出だ~。 出航用意!!」

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チュンチュン ♪中島公園スズメの声♪ チュンチュン

チュンBさん:助けられたニャンコたちには名前がつけられ、公園のアイドルになり、それを目当ての全国からの観光客が増えたりすることでしょう。
「公園でニャンコに会えたら、その日はラッキー!」ということで、TVの取材もきますよ、きっと。
nakapa:Bさんが放送記者になって来て下さい。 隊長にはそれらしい格好をさせます。ジャージにサンダル履きでは困るのです。栄光の救助隊ですからね。

チュンCさん:救出ボランティアに名乗りをあげたく思います。太目のおばさんは重たいのでボートが沈むと困ります。陸上での任務を希望します。
nakapa:いいでしょう。海軍ばかりでは戦はできません。陸軍大将に任命します。そのくらいの大きさですか。 はっ、少々ですか? 少将でもいいですよ。

チュンDさん:フィクションかノンフィクションかわからなくなりました(笑)。
nakapa:私も分かりません(笑)(笑)(笑)。

チュンEさん:私は助け舟を求めている人に泥舟を提供したことがあります(爆)
nakapa:泥舟に乗って救助に行こう。爆笑しながら助けよう。 幸運を祈る!

チュンFさん:サロンで、素敵なシャンソンを聴いた後、ちょつと寄り道をして、隊長さまを探しましたが姿が見えず、 トボ~とボート乗り場の様子を偵察しながらバラの花園を通りましたが、ニャンコ救出のお手伝いは叶いませんでした。
nakapa:貴女様が救出作戦に参加してくれたら、さぞかし優雅なミッションになるでしょうに、これも叶わず、 残念!

チュンAさん:にゃんこレスキュー隊の おもしろいこと。そして、また最後の落ちがおかしくて、大船には笑ってしまいました。
nakapa:努力しました。 「こんなところで努力してどうするの?」と、笑われそうですが、笑いながら努力したのですから、まあいいで笑。

チュンGさん:そういえば昨夜、道端で猫が車に轢かれたのを見てしまいました、可愛そうで頭から、なかなか離れません、、、、(-_-)zzz
nakapa:海に陸に危険がいっぱいですね。使命の重さを噛みしめています。

チュンHさん:ただの雑文なのに小説と断っていることが怪しいです(笑)
私は9割が事実で1割がフィクションと 見ましたが・・・
nakapa:肯定も否定もしません。  もし肯定すれば身の安全が……。 「中島公園を有名にする」という密命を帯びて、月世界より派遣されて来たのです。

チュンIさん:救出ボランティアですが、nakapaさんが声掛けてくれたら手伝いたいと言ってる、奇特な方を紹介しますよ。
nakapa:有難うございます。手当ては払えないのですが、階級なら四等水兵から提督まで、お望みの位を授けられます。 救助艇は自前で調達願います。

チュンJさん:私は嫌いじゃないけど猫に飛び掛かられた事が有るので怖い…。
心で手伝ってるわ早く助かれ~~って。
nakapa:私と同じです。ガンバレガンバレ、タスカレー! ただ~それだけ~♪

チュンKさん:猫派といたしましては黙っていられません~ 。
        隊長さん~何とか宜しくおねがします<(_ _)>
nakapa:さぞかしネコは力強く思うことでしょう。 ちなみに私は無党派です。

チュンLさん:ここまできてしまうと、中途半端では収拾がつかないと思います。 きっと人間が我慢し、似非動物愛好者の趣味に付き合わされると思います。
nakapa:似非動物愛好者の「似非」は「えせ」と読み、似て非なるものという意味からの当て字だそうです。なるほど、なるほど。なんとか分かりました。

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2012年1月18日更新

中島公園動物小説

3.実録!猫は泳ぐ人も泳ぐ
2.報われなかったニャンコへの愛

1.ニャンコ救出大作戦






中島公園菖蒲池。やがて、氷は融け島と陸地は離れる。猫が北島に取り残されても不思議ではない。


こんな風に氷の上を歩くのが好きなようだ。コタツで丸くなると聞いていたのだが…。


「乗船券売り場」と書いてあるぞ。
何んとレトロなボートハウスだろう。


波止場と呼ばれているボート乗場。


ご覧の通り、このボートにはオールがない。誰かが無断で、手漕ぎで乗って来て乗り捨てたのだろう。















北島と陸地の間は10mもない。


ダンボールと発泡スチロールの御殿は雑然としている。














ニャンコです。どうか助けてください。






































 
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