札幌市電(路面電車)沿線には、資料館、永井邸、三誠ビル等、歴史的な建造物も多い。そして中島公園の歴史は札幌の歴史そのものとも言われている。この二つを組み合わせれば観光の柱の一つになり得るだろう。
2018年8月12日 市電開通百年 停車場前-中島公園
記念ロゴマークを決定! 予定している記念事業を公表。
詳細は市交通局公式ページ→路面電車が開業100周年を迎えます!
中島公園・停車場前(札幌駅)間が市電の始まり
市電は1918(大正7)年、停公線(札幌停車場 - 中島公園)として始まった。その年8月1日から9月19日までの50日間。メイン会場を中島公園とした開道50年記念博覧会が開催された。それを機に馬車事業を電車化したのが市電の始まりである。
札幌区中島公園地(1918年当時の地名)札幌市公文書館所蔵
1918開道50年記念博覧会奏楽堂付近の雑踏 札幌市公文書館所蔵
博覧会は僅か9万5千足らずの人口の札幌に、50日間で140万もの観客を集める空前の大イベントとなった。近代都市札幌の幕開けである。男性の服装に当時の特徴が表れている。大正時代に大流行したカンカン帽、それと今は通学以外には余り見られない学帽姿。女性が少ない。
中島公園へのアクセスは市電が便利
市電「中島公園通」停留所下車、徒歩2分の位置に中島公園がある。
左側に「中島公園通」停留所、右に八重桜並木が見える。その道を2分も歩けば中島公園に着く。豊平館、天文台、札幌コンサートホール・キタラ等に近い出入口。直接中島公園の中心に行けるので便利だ。
意外に知られていないが豊平館へ行くなら市電がベスト
上の画像より市電中島公園通停留所すぐそばの案内板の部分を拡大。停留所より豊平館までの距離が200mと書いてある。地下鉄中島公園駅から約350m、幌平橋駅からなら800mもある。天文台に行くとすると中島公園駅から450mだが、中島公園通停留所からなら150mである。
2016年夏には豊平館がリニューアル・オープンする。ループ化した市電は豊平館へのアクセスとして最適。しかも天文台からも札幌コンサートホール・キタラからも近い。中島公園の中心に近い便利な停留所である。
1918年市電の始まりから2015年のループ化までの概略
2013年5月25日、中島公園近くを通る新型低床車(愛称はポラリス)
1918年中島公園で開催された「開道50年記念博覧会」を機に馬車事業が電車化。これが市電(路面電車)の始まり。その後、いろいろな変遷をへて2015年12月20日にループ化開業。市電と中島公園は市街観光の柱になると期待されている。一方、2013年には新型低床車を1両導入し、15年現在は3両体制になっている。
明るくてキレイな車内には対面二人掛けの座席もあるポラリス。
新型低床車両ポラリスは街並みに溶け込む洗練されたデザイン。乗り降りしやすい小さな段差、広い車内、大きくて開放的な窓が特長。そして車窓から広がる四季折々のまちの景色を眺めやすい等、いろいろ配慮された、乗って楽しい車両である。
中島公園と歴史を繋ぐ市電
2015年12月20日、路線ループ化と新車ポラリスの導入で市街地観光体制が一歩前進した。これを更に進め観光の目玉になることを期待する。景観、食、歴史といろいろあるが、ここでは歴史について考えてみたい。
約50年前に札幌に転居した当時と今と大きく違う点は、市民の間に開拓以前(縄文・アイヌ)を含めて郷土史を見直す動きが強まってきたことである。市電ループ化と中島公園の現状とを関連付けて考えれば。近代史以降の札幌史を市民や観光客にに紹介するツールが出来ると考えている。
例えば、豊平館に中島公園を中心とした歴史的資産を展示する。その場合は時計台等、他の施設と重複を避ける為の工夫が必要である。他の歴史的施設でもやっているように、地域の歴史を中心に展示することが基本と思う。具体的には中島公園、すすきの、鴨々川、山鼻地域、そしてそれらを繋ぐループ化された市電である。
観光としては、新幹線建設も決まっていて、発展し続けるJR札幌駅周辺をモダンな札幌と位置づけ、それとは逆に札幌の古い部分が数多く残されている、中島、山鼻、すすきのを含む札幌南部をレトロな札幌と位置づけることが大切と考える。
200万都市には少なくとも二つの色分けが必要と思う。それが相互に刺激し合って観光地としての魅力を高めて行くものと考える。そこに、水と緑の中島公園が歴史と芸術の公園を目指す意義があると思う。観光の足として界隈を循環する市電の役割は大きい。
2016年6月8日札幌シニアネットが「市電を楽しむツアー」
札幌シニアネット(SSN)が車両2台に分乗して「市電を楽しむツアー」を開催。会員60人がループ化した市電に乗って2周のツアーを楽しんだ。
山鼻の「電車事業所前」停留所。貸切電車の前に運行中の一般電車が見える。普通は2両の電車がこんなに接近することはないだろう。ツア一行は30人ずつに分かれて分乗した。こちらは2号車。
市電を楽しむSSN会員。貸切電車の内部は、シートはそのまま利用し、真ん中にテーブルを置いて飲食が出来るようになっている。マイクもある。
SSNは600人の会員を擁するシニア交流団体だが、地域活動等、社会貢献活動にも力を入れている。中島公園関係では春・秋の「クリーン鴨々川清掃運動、」、冬の「ゆきあかりin中島公園」等、1年を通して団体として参加し、イベントに協力している。
SSNの詳細はこちらをクリック! → NPO法人 札幌シニアネット(SSN)
2時間30分の内、15分ずつ2回、電車事業所で休憩した。その時は車庫とか構内を通過するので、普段見れない風景に出会えるのが楽しい。
市電ツアーも楽しいけれど、手足を伸ばすのもいいものだ。休憩。
車両の行き先表示は「貸切」。1ヶ月前に乗ったラジオ「山鼻、あしたもいい天気!」の貸切電車では正面窓下に自分たちのロゴを描いた看板を付けていた。右サイドページの下の方に小画像がある。
外から見るとこんな感じ。やはり普通の電車とは違う。
午後7時30分、貸切電車は車庫に向かって帰って行く。ここは集合・解散場所である「すすきの」停留所。市電はここから曲がって三越方面に向かう。去年12月20日にループ化した時に停留所も新しくなった。
2016年5月8日「山鼻、あしたもいい天気!」10周年
中島公園を含む山鼻地区のラジオ番組、ラジオカロス・サッポロ「山鼻、あしたもいい天気!」(略称やまてん)は開設して10年たった。それを記念して市電を貸切り、祝賀会を開いた。市電は外回りと内回りの2周で約2時間。沿線を見渡しながらの楽しいパーティーとなった。
この番組では10年前から市電のループ化等、市電活用について取り組んで来た。市電ループ化への思いも市民に伝わったことと思う。
祝賀会の詳細はこちら → 市電貸切で山鼻のラジオ番組が祝賀会
2015年12月20日市電ループ化「どサンこパス」で市内観光
ついに市電がループ化、土日祝日は「どサンこパス」で市内観光をしよう。乗車券1枚310円で、大人1人とこども1人、合計二人が市電に1日乗り放題! 親子で市内観光、親子二組で市内観光とかいろいろ楽しめる。
ともかく二人で310円とはお徳。「どサンこパス」には、“「土」曜日と「サン」デーに「こ」どもと一緒に”という意味ご込められているそうだ。観光と言ってもいろいろあるが、ここでは札幌市街地歴史散歩を紹介したいと思う。
市電が走る古い街、札幌市街地歴史散歩
すすきの停留所から、行先表示[外回り]循環に乗り、時計回りで中島公園通方面に進みぐるりと周って狸小路までのコースを考えてみた。
「すすきの」停留所の南側、薄野(すすきの)遊郭
乗る前に南側の歩道を見ると他より広いことが分かる。土塁で出来た遊郭の塀の名残だそうだ。1871年(明治4年)の建造物の跡地である。
「東本願寺」停留所付近の札幌と山鼻村との接点
碁盤の目に区画された札幌だが、角度が違う部分もある。札幌が発展して山鼻、札幌双方の道路を繋げた結果、直線でない角度が出来てしまった。東本願寺前停留所より山鼻9条方面を望む。
「中島公園通」停留所より徒歩2分、中島公園は歴史の宝庫
天文台は岡田花園の跡地建っている。行啓通から入る道路とそれに続く園路が直線なのは競馬場のコースだったから。豊平館は鹿鳴館よりも古い。日本庭園に江戸時代の茶室八窓庵がある。木下成太郎像は貴重な歴史的文化遺産。山内壮夫彫刻群は北海道大博覧会の遺産。詳細はそれぞれのリンクからご覧下さい。中島公園全体の歴史はこちら→中島公園の歴史
市電中島公園通停留所に近い3施設
豊平館は工事中、2016年6月20日にリニューアル・オープンの予定。中島公園通停留所より200mの位置にあることは意外に知られていない。地下鉄中島公園駅からは350mある。画像は4年がかりの大工事の為に閉館したばかりの豊平館。2012年6月13日撮影
札幌市天文台は中島公園通停留所より150m、地下鉄中島公園駅からなら450mもある。昼間は太陽の黒点観測、夜間は星座観測が無料で公開されている。冬は斜面を利用して遊ぶ子供たちも多い。夏は豊平川花火大会をここから楽しむ人たちも少なくない。
中島公園通停留所から札幌コンサートホール・キタラまでは約250m。地下鉄を利用するのに比べてかなり近い。しかし、コンサートの帰りは沢山の人が同時に帰るので1両運転の市電では乗り残しが心配だ。大量輸送の地下鉄の方が安心と思う。
市電「行啓通」停留所より徒歩2分 黒田家住宅
行啓通停留所から北へ2分、路面電車の山鼻線開通後1926(大正15)年に建てられた黒田家住宅がある。敷地外からのみ観覧可。南13西7
「行啓通」停留所より徒歩6分 山鼻屯田記念会館
市電行啓通停留所より5分ほど歩くと2本のとんがり帽子の様な屋根が目印の山鼻屯田記念会館(南14条西9丁目)が見える。
資料室には1876(明治9)年に入植した屯田兵の農機具、制服、生活道具などが展示されている。
開館日時は火・木曜、10時~12時、土・日曜、10時~15時。
「行啓通」停留所より徒歩7分 山鼻小学校と明治天皇記念碑
石碑には「明治天皇御駐蹕(ごちゅうひつ)之地」と書いてある。1881(明治14)年9月1日、天皇が山鼻村に来られたとき山鼻小学校でお休みになられた。そして周辺で作業していた屯田兵に「いっそう仕事にはげむように」とお言葉をかけてくれた。大変な名誉であると感激した人々は、明治天皇が山鼻小学校でお休みになられたことを記念して、この記念碑を建てたと言われている。
山鼻小学校は1878(明治11)年4月18日開校の歴史ある学校。「山鼻街道 郷土資料室」には沢山の歴史資料が保存されている。
「行啓通」停留所より徒歩7分 山鼻公園「お声がかりの柏」
山鼻小学校の隣にあるのが山鼻公園。そこには明治天皇が巡幸された時、目に止められた木がある。
その木は1881(明治14)年に天皇が樹名を尋ねられたので「お声がかりの柏」と呼ばれるようになった。現在残っているのはその子孫である。
15年前中島公園周辺のマンションに転居した時、近所を散策した。そのとき山鼻公園に出会い、大木や記念碑などを見て驚いた。このような小さな公園に、こんなにも沢山の歴史が埋まっているものだと感動したことを覚えている。
「中央図書館前」停留所沿線の歴史を調べるときは図書館に相談
図書館は本を借りるだけではない。「調べもののお手伝い」をするレファレンスサービスも重要な仕事。例えば市電沿線の歴史の一部を更に深く調べたければ、図書館に相談することが出来る。
「ロープウエイ入口」停留所、無料シャトルバスからロープウエイ
ロープウエイ(有料)中腹駅に神社があり、そこには北海道にスキー技術を伝えたレヒル中佐、1972年札幌冬季五輪当時の国際オリンピック委員会(IOC)のブランデージ会長などがまつられている。
「西15丁目」停留所、すぐ東側に市電が通っていた小路
かって市電の線路があった跡地。幅が狭くカープがきつかったため、車両の大型化に伴い、現在の道路上に線路が敷かれた。
市電がカーブして南に向かう手前の小道。2016年4月10日撮影
「中央区役所前」停留所、西側近くに昔の鉄柱
昔この辺りに市電の車庫があり、架線が分岐する場所だったことを示す鉄柱が残されている。車庫は1918(大正7)年~1968(昭和43)年の間、存在した。画像は右サイドページ下方の「札幌市街地歴史散歩」参照。
「中央区役所前」停留所より徒歩3分、三誠ビル
1924(大正13)年に建てられた旧藪商事会社ビル。札幌市内に残された最も古い鉄筋コンクリート造りのビル。
場所は中央区南13条西1丁目で電車通りに面している。見学は共有部分のみだが、飲食店等もある。
『広報さっぽろ』2015年12月の記事によると「内部はむき出しの配線やレンガの装飾などレトロな内装が魅力」とのこと。残念ながら入ったことがないので引用させて頂いた。
「中央区役所前」停留所より徒歩4分、永井邸
電車通りから少し引っ込んだ所にある。場所は中央区南2条西12丁目。「大正期の町並みの面影を残す貴重な建造物」と言われている。『広報さっぽろ』には敷地外からの観覧可と書いてがるが、じろじろ見るのは遠慮して通り過ぎただけ。
「中央区役所前」停留所より徒歩6分、資料館
停留所から6分だが大通公園の延長線上にああるので分かり易い。札幌軟石を使った重厚な建築物は、札幌控訴院(後の札幌高等裁判所)として使われていた。回り階段やステンドグラスがレトロな感じ。場所は中央区大通13丁目。開館時間は9時~19時、月曜(祝日の場合は翌平日)休館。
「狸小路」停留所、140年以上続く商店街
店舗が建ち始めたのは1869(明治2)年。古い歴史ある店舗から新しい店まで約200店。商店街から札幌の歴史見えて来る。
ループ化された路面電車で市電沿線歴史散歩をしよう!
すすきの停留所を起点として紹介したが、ループ化しているので何処で乗ってもいい。例えば狸小路から乗ればすすきので降りる人が多いので席を取りやすい。将来は中島公園に「札幌歴史・文化館(仮称)」を新設し、歴史・文化・観光資料を展示したらよいと思う。